C5

ざっと 1,000km 程度つかってみての感想。

パワー

結構でかめのワゴンにして 2リッター 130馬力。あいかわらずアンダーパワー。加速というものはかなりダメ。実にフランス車らしい。(フランスでは馬力に応じて課税される)

シグナルダッシュの加速といった短期的な早さはオトナが乗る実用車にはどうでもいいことで、そのあたりはこの春休み「頭文字D」を一生懸命読んでいる中学生に議論をまかせておけばよい。

大人の車に必要なのは中期的、長期的な早さで、それに必要なのは実用域のトルク、これこそが快適さと結果としての早さにつながるわけだが、こっちにやや不満ありなのがせつない。前よりも若干高回転型になってしまった。

床まで踏むと 6,000 rpm over まで回ることを許すAT セッティングになったのはいいが、それなりに快活に走り回ると、3,500 とか 4,000 まで使うことになってしまい、AT がまたイマイチなので、あまりいい使い勝手ではない。

エンジンが DOHC になったのはいいが (なんとツインカムの車を所有するのははじめてだ)、実用車として押えるところを押えてくれなくては困る。「DOHC になったので云々」みたいな、仕事のできない奴の言い訳みたいな話は聞きたくない。それなら SOHC なり OHV のほうがいい。

ハンドリングと乗りごこち: 高速

これはさすがにイイ!
地上数センチのところを滑空するような、しかし地に足もついた独特の感じ。適宜ロールもし、しかしオン・ザ・レール感も充分。
110km/h に達すると車高が数センチ下がるので、さらに高速巡航キター。170km/h ぐらいまで、実に実用、快適、春の野原のように安全な速度域だ。(馬力がなくてでかいので 175 km/h 以上出ない模様)
シトロエン本社にお賽銭を投げたくなる感じ。

ハンドリングと乗りごこち: 低速

いまいちゴツゴツする。

ステアリングの切れ込み塩梅が非線形というか、180度以上切り込むあたりから急にアシスト量も曲がり角度も変化して、不快だ。十何年前ぐらいに、ビッグ・アウディ (100 だったか) の FWD にちょっと乗って、大回りにトルクステアにこりゃひでぇもんだと思ったが、まるで当時のそういった悪しき前輪駆動車に似た感触がある。戦前からかれこれ70年も FWD を作っているのに、シトロエンは一体何をやっているのか。

ステアリングの位置関係も全然しっくりこない。混んだ狭い市街をぐるぐるあれこれ右に左にさくさくしぱしぱ泳ぎ回るのに、Xantia が 95 点とすると、C5 は (ボデーのでかさもあるが) 30 点。ぜんぜんだめ。シトロエン本社に生卵を投げたくなる感じ。

おれの買ったのはかなり初期型なので、今後毎年熟成がすすんで良くなっていってくれると信じたい。

AT

プジョー・シトロエン連合 (PSA) ご自慢の内製電子制御トランスミッション AL4だが、耐久性だめだめのクソ ZF 4HP14 にやっと取って代わられたかと喜んでいたものの、なんか東京にあってない。

低速、とくに登坂で微妙に加速したときの 1→2 のドッカンは、まるで縁石に乗り上げたかというようなショック。

スピードダウンにしたがって積極的にシフトダウンしていく仕様はZF も AL4 も同じで、ヨーロッパ型のしつけなのだろう。3 とか 4 のままどこまでもスルスルいっちゃう日本車のオートマのほうがいいと、これを嫌い非難する向きもおおいが、これは好きずきということで、おれは割と好きだ。

マニュアルモード

最近はどこもかしこもメルセデス風というかジャガー風というか、ポルシェのティプトロマチックぎみなマニュアル + - モードが横についている。

この手の AT と暮らすのは初めてだが、なんか、いらねーやこんなの。つか邪魔。おれはオートマチック状態においてシフトダウンしたいのであって、別にマニュアル操作したいわけじゃないんだ。それならそれで、ウーノとか 205 とか KP61 とか乗るってば。

品質

外装、内装、ともにかなりよくなった。15年まえのトヨタ、10年まえのダイハツぐらいには良い。

シトロエンのブレーク(ワゴン)ということで、シトロエン本社ではなく、例によってユーリエが製造を担当しているようだ。

ステアリングは安物でどうしようもない。運転していて不快だ。マジで革巻きのやつに交換できないかなこれ。

長距離巡航するクルマに必須の、両手親指を置くためのスポーク上の小さなくぼみもない。ぽっと出のメーカーではないのだから、こういった歴史というか作法というか文法は当然押えていてほしかった。がっかりだ。

イスは充分によいが、シトロエンに期待したレベルには達していない。この程度の代物ならベンツとかトヨタでも作れることだろう。

使い勝手

とにかく中は広い。

もの入れは一杯あって便利。
ただ内張りとかないプラスチックなので、ものを一杯いれるとそこらじゅうでカチャカチャうるさいが、まぁこんなもんか。

ローカライズはまあまあ。センターコンソールのオーディオやエアコンの操作体系は、左側から操作すると便利そうだね君達。

右ハンドル化の副作用らしいが、アクセルペダルに比べてブレーキペダルがえらい手前にある。
Xantia (右ハンドル) は、逆にブレーキペダルに比べてアクセルペダルが手前に飛び出していた。Xantia Break で、ガソリンスタンドで洗車をまかせたら、バイトのおねえちゃんがペダルを踏み間違えてアクセル全開で洗車機に突っ込んで全損、という話をきいたが、これはおねえちゃんに同情すべきだろう。

テールゲートのガラスだけでも開けられるのは便利だね。

リモコンキーでカギを開けたり、閉めたり、点滅させたり、あと窓をちょっと開けたり、全部開けたり、閉めたりできるのは便利だし、そもそもおもしろい。遠くからガチャガチャやっていると、なんか高級な暮らしをしているような、えらくなったような気分になって愉快だ。

センターコンソールのカップホルダーは、冗談でしょこれ?

カップホルダーの前、車高調整ボタン、これ物を置いたりとか何かの拍子に押してしまうことが多く、さすがに電子制御が入っているので高速走行中にぐいぐい車高最低になって鎮座全損ということはないが、なんとかならないかなこれ。

バックソナーはあればあったで結構べんりなものだ。

しかしバンパー、キレイに色が塗ってあるが、なんかどうなんだろそういうの。バンパーは bumper というぐらいで、「緩衝器」以外のなにものでもない。ぶつけることが本質。そこに色をぬってもらってもしょうがない。狭いところとか、前後軽くコツンとぶつけてみてどうだ、みたいなことがはなはだやりづらい。自動車は生活の運搬道具以外の何者でもないのであって、道具として何か違うんだよな。ためしに、狭い曲り角で草木の茂みに頭を突っ込んでザリザリやってみたが、結構見える傷がついてしまった。

まぁこれは、キレイに色が塗ってあるところを引っかいたり傷がついたらいやだなぁという、見栄というか下世話な感情であって、おれの人間がまだまだ小さいだけなのか。

総合

まぁおすすめ。

と同時に、その前に乗っていたシトロエン・エグザンティアは、「飛ばしてよし」「積んでよし」、

都内の狭い混んだ殺伐を切り抜けて抜いて勝ち抜くのにも、
テントや道具を満載して家族4人でキャンプにいくにも、
帝国ホテルに乗り付けてボーイにキーを渡すのにも、
吉野屋に大盛りギョクを食いにいくのにも、
サーバを30台積んで iDC に設置しにいくのにも、
オタクとしていろいろ調べたりいじったりするのにも、
なにより過労死モードの日々において、運転することで人間が癒されるという、

希有の名車中の名車であったことがわかってきてうれしいやら悲しいやら。

日本に陸揚げされた最後の輸入ロットの100台を、日本中の自動車評論家たちが争うようにして各自1台ずつ押えまくったのもよくわかる。

もう一台かうかな、戻るかな...?